殺したい/
花形新次
殺したい人間はいないが
殺したい言葉はある
殺したい人間は
刃で殺すことはできるが
殺したい言葉は
言葉では殺せない
何故なら
言葉が通じるなんて
幻想でしかないからだ
俺の言葉で
誰かが死ぬなんてことは
信じない
いつだって俺の言葉は
対象をすり抜けて
見当違いのガラス窓に
跳ね返って戻って来るだけだ
狂った人間は
きっとそれを自覚している人間だ
もう少しで俺もそちら側に行く
狂った言葉が
七色に輝いて全く
意味を成さない世界へ
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