鈴虫/たもつ
 


ご飯を茶碗によそり
雨が言葉になると
薄暗い都電は
速度を少し落とした
アナログの路面
壊れた手続きの
続き
途中、メキシコとの国境で
和歌山県の破片を拾う
和歌山県になりたい
そんな誰かの古い願い
いつか諦めた願い
どこにも進まない部屋の窓から
ご飯が一粒一粒こぼれ落ちる
外はきっと
約束された幸せで
満たされている
終点の駅が近づき
人々の足音に遅れて
鈴虫がやってくる


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