わたしはきみとキスをする。/ねことら
 
キスをしたい。どんな。夜の水滴のような。
短い呼吸と音楽。それは部屋かな。
きっと部屋だろう。個人的で親密な部屋。
わたしはきみと初めてだ。初めての夜。
窓は薄く部屋の明かりを消したら夜の草原にいるみたいだ。
遠くを車が走る。たくさんのたくさんの葬列のように。
わたしはきみとキスをする。
等間隔の静寂を引き寄せるために。
そうして世界に接続している。
ふたりで描くプログラムのコード。
わたしはきみと大切な契約をする。
キスは傷に似ている。
ためらったり痛みを負ったり。
わたしはきみと共通する部分をわけあっている。
そのためにキスをする。
服と服はふたりをへだてるから
肌と肌でふれあいながら
短く長くキスをする。
祈りのようななにかをふたりの奥底から探るように。
キスは透明だ。
透明でつめたくて何かの代償だと思う。
だからキスをしたい。
ここにいていいのだと信じるために。
わたしはきみとキスをする。
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