雨垂れ/コマキ
 
薄らと厚味の増してきた肩口に雨の気配が纏わる
夜半
電車は疾うににとまっているのだろう
線路すら見えない窓に不可視の圧力などかかりはしないけれど
朝に見る抜け殻になった電車たちの舎を思う
今ならばあの屋根の下で電車たちは静まりかえり
擬人法などは頑なに拒んで横たわるのであろう

遠い知らない国の何処かで今日も金環蝕が起こる
五月雨
出来ることならば陰湿を音にしてみたい
それは窓も叩かない雨に少しばかり似ているのではないだろうか
暫く使っていないテェプレコォダァを出す
確かこれで録音した音はどうしたわけか全て
引き攣れた歪みにすすり泣くようであった

22時53分
ボーン・チャイナの底浅く
蜂蜜の様な紅茶が溜まる

夜の雨は、私の目の前で
止むことがない
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