全行引用による自伝詩。 06/田中宏輔2
 


「チャーリィはまだ理想主義者なのさ」ハチャーが言った。「世界は論理的じゃないということを認めようとしないんだ」
「確かに世界は図式的なアリストテレス的論理では動いていないね」シプリィも認めた。「それは完全に演繹(えんえき)的だからね。真理からスタートする。そしてそこから世界がしたがっているはずの法則が導きだされる。機械が得意とするのはそれさ。ところが現実生活では、人間は経験で得た今の世界のあり方から出発する。それからその理由を推察し、それが実際のものに近いものでありますようにと祈るわけだ。帰納法さ。人間がやっているのはこっちだ──しかもどうやってかは自分たちですらはっきりわかっていない。だ
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