全行引用による自伝詩。 06/田中宏輔2
 
洞窟の中で、遂に禁じられた世界の周辺を垣間見ることになった、その世界は盲を除けば、ほとんど近づいた者もいないようなところであり、その世界を発見する者には恐ろしい罰が下されるのだが、その世界を見たという証拠は上の世界であいかわらず無邪気に夢を見ている人々の手には、今日に至るまで間違っても渡ったためしはない、人々はその証拠を馬鹿にし、自分たちを目覚めさせるはずの印、つまり、夢とか束の間の幻覚、子供や狂人の話といったものを前にするときまって肩をすぼめるものだ。そのうえ、禁じられた世界に潜入してやっと戻ってきた者たち、発狂や自殺で人生を終えた、それゆえ、大人が子供に抱く称賛と軽蔑の入り混じった保護者然とし
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