全行引用による自伝詩。 05/田中宏輔2
わたしの嘆きに比べれば、宇宙は小さなハンカチでしかなかった。
(ブライアン・W・オールディス『ああ、わが麗しの月よ!』浅倉久志訳)
「ああ、心は鳥のよう」と女はゆっくり音楽にあわせて体を揺すりながら、静かに口ずさんだ。「あなたの手にとまるわ」
(マイクル・スワンウィック『大潮の道』5、小川 隆訳)
(…)しかし、そんなことは、彼にはどうでもいいことだった。滅ぶべきジェマーラが崩壊してしまうことさえも、彼にはどうでもいいことだった。彼のなかには、風がたえず埃を撒き散らす乾いた土地、埋もれた宝、人間の体がもぐりこめるような、あの空っぽの水盤などがあった。
(ユルスナール『夢の貨幣』若
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