シミ/花形新次
 
手のシミを数えることで
長く生きすぎたと知る

いつの間にか
私たちの頭上には
私たちが吐き捨てた言葉が
行き場を失って漂っていて
それが何を意味したのかさえ
もう分からなくなってしまった

言葉が行き場を失くしたように
私たち自身も
何方へ向かうべきなのか
何をすべきなのか
分からずただ彷徨っている

手のシミを見る

心の奥の方がしんとする

そこには隠せない
恐怖のようなものがある

いや、諦めと言ってもいい

私たちは
空に漂う浮遊物を
もう一度
私たちのしんとした心に
取り戻すことが出来るのだろうか

残念ながら
それはもう
無理なのではないかと思う








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