レシートの亡霊/atsuchan69
 
幽霊は、ピンハネされてこそ生きる

たとえ今の店が潰れても、
幽霊たちには、次の場所がある
たとえばコンビニへ商品を配る仕事も
義理堅い人が会社をやっている
だから心配はいらない

それでも幽霊たちには、休息はない
たとえ恨めしかろうが、
この世に残りたければ化けてでも、
そのように生きるしかない

わたしは、クルマを降りて店へ入る
三つあるレジのひとつに、
白い三角ワッペンの帽子を被った幽霊がいた
缶コーヒーとサンドイッチを買い、
代金をスマホで支払うと
オーナーは、アニメっぽい声で
レシートご入用ですか? と言った

わたしは、いらないと答えた

明け方、バイクの集団がやって来た
ヘルメットを脱いだのは、
就職氷河期で死んだ若いゾンビたちだった
どの顔も、額に白い三角シールがある
彼らはカップ麺やオニギリ、弁当を買い、
輸入チキンの唐揚げを貪り喰う

そうとも。
レシートの亡霊が集う店を作るのだ

それがわたしの使命だ





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