青い月夜の白い馬/そらの珊瑚
 
馴染んたマグカップの内側に
ある日小さな傷ができて
次第にそれは珈琲の色に染まった
洗っても洗っても色は落ちない
傷は傷として生きていく
宇宙の理のようである

朝、
深い藍色のそのマグカップに
白い馬は模様として戻っており
わたしを安心させる
つるりとした手触りのマグカップの
傷ひとつないような表の顔
あてどない一日のはじまり
手のひらで包むと
珈琲の湯気を踊らせるマグカップは
ほんのすこしやわらかく縮んだように感じた
桃林さんにそのことを打ち明けると
そういうこともあるかもね、とさらりと答える

ありえないことなんてひとつもない
あなたもそう信じているにちがいない

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