栄影/
本田憲嵩
夕方、とても冷たい風、ちいさな米穀屋の前の自販機へと缶コーヒーを買いに行く。ガラス製の古びた開き戸には黄色く印字されている「協栄米穀店」、ちょうど金色の夕陽に照らされて、「栄」の字の部分だけが、その昭和の時代からつづく狭い店内に光とともに入りこんで、そこに置かれた白い灯油ストーブの側面に、
栄
、と影文字として映し出されている。そんな世界の片隅。――赤とんぼが自販機に留まってその尾を擦りつけている。
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