夢幻/白原雪
人は一人では生きられないと誰かが私に言った。全ての悩みは人間関係にあると昔に偉い人が言っていた。確かにそうなんだろう。でも私は分からない。理解できる筈なのに、それでも分からない。私は一人で居たい。冷たい風に当たりながら、静かに、ただ静かに生きていたい。誰にも気付かれず、まるで私が初めから存在しない物体であるかのように生きていたい。でも人は私を見る。存在に気づく、認知する。私という一つの個体が存在するかのように、まじまじと見る。私に突き付けてくる。分からない。私は孤独に生きたいのか。それとも心の奥深く、誰も見えない、見せない真っ暗な所で、私は誰かに気づいて欲しいのか。
このじっとりとした気持ちを、誰かに分かち合いたいのか。ならばこの孤独は、私の真っ暗な所が見せているまぼろしなのか、幻想なのか、将又夢であるのか。それすらも判らぬままに生きていくのか。それならば、私の生は始めから、生という概念が私の体にずっぽりと埋め込まれた時から、私はまぼろしを見ているのだろうか、夢を見ているのだろうか。
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