接吻/ただのみきや
う 耐え切れず顔を剃り落とす
すると光を生やし陰影を宿し「ごくつぶし!」と呼ばれ続けやがて
空を焦がす檸檬の樹となってまだ精を漏らしたことのない少年を
呼び寄せた 囁きはその耳に纏わりついて首を吊り
綺麗な歌が垂れて来ると少年はそれが嫌いになれない自分を責めた
等身大の虚像を先に逝かせた肌には怯えた電気仕掛けが尊いと
劇中劇は着崩れて覗く素肌を鬼火が舐める
鳴くか鳴かぬか火かき棒をかき回し貫通した向こうに見えたもの
それは大きなカマドウマとまぐわう男の姿だった
男は言った
(現実とは芸術であり失禁する作品の大量発生である
きみたちの甘噛みこそが爛熟した胎児をオルガスムスに導く
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