接吻/ただのみきや
海一枚めくると鈴生りの想い 孕んだ仕草が風に弾け
笑いの花びらを嘔吐するわたしには静寂が投函される
現実は一匹の魚のようで眼差しの中でいかようにも踊るもの
かわいた泥の身体を選択する者たちにはいったいどう映るのか
爪を噛む男が木星行きの舟に乗ろうとして曲尺とコンパスの
隙間から覗いている 未来から剥離したイメージが
ねじれに身を任せ過去へと転生した 地図から起き上がる死者の
舌に入れ墨された木霊から駆けて来る少女の心臓その蹄は火花を散らし
敷石と化した常套句をかたっぱしからかたわにした
都市の認知機能は低下し朝顔は涙する 饒舌地獄が乳房に問われ
貝のように中身がはみ出てしまう
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