お祖母ちゃんの骨/ひだかたけし
 
おばあちゃんの亡骸
白布団に横たえられて
足裏滲み淀むオレンジ色の
ゆうらゆら 、ゆうらゆら
揺れ動くのを見入りながら
漆黒艷やかな毛並みの
金の眼をした愛猫、
いつの間にか居なくなるを
家族皆がハッと気付く
瞬間 、
空 稲妻の走る重低音響き渡り
幾度も地の底へ突き入り沸き起こり

 刻み込まれた鉄扉の閉まる残響 、

肉身エクスタシー
受身快楽極限を
味わい尽くした果ての
能動態へと覚醒する
自らの意識の奥処から
億の光を呼び込む
今の私の日々営みの瞬間に
フラッシュバック、

繰り返し出現する火葬への棺送り 
焼き上がり骨拾い灰の粉々と崩れ
お祖母ちゃんの死を初めに見届けた
漆黒の毛並み金の眼の愛猫の失踪、
尚も骨挟む皆の箸の冷徹な動き蠢き、 

此の世今生の偶さかに偶さか重ね
それら偶さかと思えなくなった瞬間、

人、それぞれに抱え持つ内的必然

幾重にも刻み込まれた自我本性の一端を識る。

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