破壊、そして光/青の群れ
て
彼女の咽び泣く声と重なる
旋律は瓦解し
泣き声は鎮魂の歌へ
うねりの中で世界は
まだ形を保とうとしているのに
誰かの思い出は
青い車に収集され
形状も、機能も、性質も失う
あれから30年
何が変わったの
流された船
新しい建物
還る身体
遺る骨
暗闇を泳ぐ魚の眼球が
微かに揺らぐ小さな光を捉える
窓の隙間から夜空を
覗き見ようとするみたいに
劣化してしまう記憶を
焼きつけるみたいに
見失なったはずの未来の断片は
漂う影をゆるやかに包み込み
沈黙でも虚無でもなく
小さな光の連なりは
泡になって浮上する
何度も
ぼやけた輪郭を撫でる
そして光は
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