アズライール/りつ
雨の降らない砂漠に雪が降る
それは哀しみか慈しみか
生まれたばかりの天使の雛から
抜け落ちた羽毛だろうか
いっときのなぐさめなんて
すぐに渇いてしまうとしても
いま、この、
奇跡の瞬間だけは
とても幸せだ
死なないで
とも
生きてください
とも言えないわがままを
私は知ってた
父の今際の際に聴こえた
「すまんなあ、もう疲れたんや、すまんなあ」
それが私の妄想だとしても
母や姉が父に頑張って、お姉ちゃんが来るまで、頑張って、
と必死に呼び掛ける中
私は真逆のことを言った
お父さん、もういいよ、もう頑張らんでいい、ラクになりや。
そう呼び掛
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