ifの履歴/たもつ
落葉樹が曲がる先に
交番の波形
あなたがわたしの内緒を見た時
らっきょうみたいだ、と言ったので
その口の形から
漏れてくる一粒の光があった
すみそにあん
聞こえますか
敷き詰められた
かつて文房具だったものたちにも
雨雲レーダーに映る
回転木馬の放牧地
兄弟がしていた影ふみ遊びの跡
ほうじ茶が美味しいと感じるのは
わたしではなく
あなたが健康でいるから
そう思うと
砂糖が溶けていく様子を
最後まで見届けるのも
苦ではなかった
流れていく
それはいつも
自然なことだった
わたしたちがこうして
お互いの手に辿りつくことにも
小さな理由があり
いつも匂いに包まれている
世界中の新生児が授乳を終えて
一斉に命のげっぷをする
if.
退職間際の警官が
履歴書を持参して訪れた夕方
何もしてあげられないわたしたちは
ただ首を振るばかりだった
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