カラメル/guest
その街にはあまり雨が降らなかった
住人が雨嫌いで降らさなかったのだ
そこでも月は美しいとされていた
月に喩えられるような美女はいなかった
俺は一人いつも雨に降られないように
名前の分からない神の身許でぼんやり
時折祈るためにキャンドルを取る人がいた
それでキャンドルの意味を初めて知った
時々馬鹿みたいな喧嘩がしたくなって
裏通りを歩いたけどみんないい人達で
ただ化粧の匂いが肌について取れなくなる
何かから逃げようとしてみんな匂っていた
天気とは風の流れのことなのだと分かった
それを澱ませることが罪なのだと初めて知った
小さなアパートには猫が一
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