新宿の幽霊たち (「センテンツィア」改題)/室町 礼
 

瞬時に数百メートル先へ。そこへ、デフラグされ
た女たちの笑い声が星のように落ち。フォーマッ
トされた恋人たちが再フォーマットされた恋人た
ちと行き交う。数字は名詞を口にし、幽霊は感動
詞を叫ぶ。
地も木も空も鏡でつくられた森がある。
その扉がひとつ ──ちりんと鳴って、丁寧に包装
されたおんなたちが黒い紳士を送り出す。角柱に
映った巡礼の男の汚れた姿をみて女のひとりが小
さな声をあげる。男は白い歯をみせて微笑んでい
る。振り返ってもだれもいない。男の断片はすく
なくとも幾度もの屈折と反射を繰り返してそこに
届いているのだろう。漫画喫茶、居酒屋、キャバ
クラ、ホストク
[次のページ]
戻る   Point(6)