全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
 
ター『Sudden Fiction』覚え書、小川高義訳)

もちろん、この荒廃には意味がある。
(ミシェル・トゥルニエ『メテオール(気象)』第十六章、榊原晃三・南條郁子訳)

 我々はいつだって欲しくないものを注文するものなのだ、そんなことは自明の理ではないかとあなたは思うかもしれない。
(マリリン・クライスル『アーティチョーク』村上春樹訳)

 かたわらにきた彼女が、まばゆい星明かりの中で身をかがめたとき、レイブンは見てとる──彼女のうなじと肩だけでなく、露出された肌のいたるところ、脇腹、太腿、上腕から肘にかけて、また肘から手首にかけて──いたるところに毛すじほどの傷痕の網模様が
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