全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
 
まで見通せた。
(メアリ・ロビンソン『おまえのほうが……』小川高義訳)

 従業員が地面を掃いていた。つぎの当たったグレーのオーバーオールを着ている。なんだか地面そのものから生えてきたみたいな男だ。それほど周囲に溶け込んでいる。
(エドラ・ヴァン・ステーン『マルティンズ夫妻』柴田元幸訳)

洗濯ロープにぽつんと一枚吊るされたタオルがその情景を見守る。
(クラリッセ・リスペクトール『五番目の物語』柴田元幸訳)

「どうしてあくびはうつるのか?」
(ジェラルド・カーシュ『狂える花』駒月雅子訳)

 彼のことばがおわらないうちに、扉(とびら)がひらいて、若い婦人がはいってき
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