全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
うのに、小さなものが生き残るなんて誰が予想するでしょう? 人は何年もの時を忘れ、瞬間を覚えています。数秒の時間、象徴的なもの、それだけが残って物事を要約します──プールに掛かった黒い覆い、とか。愛は、いちばん短いかたちでは、ただのひとつの言葉と化します。
(アン・ビーティ『雪』柴田元幸訳)
「愛ね。そんなに重要なものかしら。あなたは先生だったから、ご存じでしょう。重要なもの?」
(P・D・ジェイムズ『策謀と欲望』第二章・15、青木久恵訳)
「愛って、名詞でもあり動詞でもあるのよね」
(オーエン・コルファー『新銀河ヒッチハイク・ガイド』下・第8章、安原和見訳)
その忘れがたい
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