全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
わしらは、わしとおまえとは、ほんとに一つのものではなかったんだね──おたがいに相手の感じていることを理解するほどにはね。すべてがそこにあるんだよ、いいかい? 理解と──同情、それは貴重なものなんだ。(…)わしらは、恐ろしいことに、人生の外側ばかり歩いて来たのだということに気がついたんだよ。おたがいに何を考え、何を感じているかを話しあったこともなく、ほんとうに一つになることもできずにね。おそらく、あのちっぽけな男と細君との間には、隠し立てすることは何もなく、おたがいに相手の生活を生きているんだよ。
(ジョン・ゴールズワージー『陪審員』龍口直太郎訳)
「ものごとに終わりはなく、それを言うな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)