全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
 
『革命前夜』佐藤高子訳)

 フロベールは、オメーの俗悪さを列挙する場合にも、全く同じ芸術的な詐術を使っている。内容そのものは下卑ていて不快なものであっても、その表現は芸術的に抑制が利き調和しているのだ。これこそ文体というものなのである。これこそ芸術なのだ。小説で本当に大事なことは、これを措いてほかにない。
(ナボコフ『ナボコフの文学講義』上・ギュスターヴ・フロベール、野島秀勝訳)

あらゆる精神分析医の例に洩れず、ランドルフも自分自身にしか関心がない。
(ゴア・ヴィダール『マイラ』37、永井 淳訳)

 世界は悪く、人間はすべて愚かだ──だが、押しつぶされない人びともいる。それは
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