全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
女が肩をすくめるのが感じられた。「それが人生なのよ」
ぼくにとっては、それではあまり答えにはなっていないのだ。疑問が深まれば深まるほど、答えはどんどん浅いものになってゆく──いちばん深い疑問には、結局、答えなんてぜんぜんなくなってしまうんだ。なぜ物事ってのはこんなふうなんだろう、キャス? ため息をついて、腕が触れあう。
(キム・スタンリー・ロビンスン『荒れた岸辺』下・第三部・16、大西 憲訳)
「神の困ったところは、めったにわれわれの前へ現われないことじゃない」とキッチンはつづけた。
「神の困ったところは、その正反対だ──神はきみやおれやほかのみんなの襟がみを、ほとんどひっきりなしに
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