全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
くなるのにねえ」
(ジョン・ブラナー『地獄の悪魔』村上実子訳)
欲しがっていたものが、もうどうでもいいと思いはじめたころに手に入るわけか。こんな経験はよくあることだから、そのために知的な人間がいつまでもくよくよするわけがないが、それでも心を乱す力は十分残っていた。
(P・D・ジェイムズ『不自然な死体』第一部・2、青木久恵訳)
長いつきあいだというのに、この時計とわたしはあまり親しい間柄ではない。私がこの時計に抱いている感情は、友情というよりは尊敬に近い。
(アンナ・カヴァン『われらの都市』?、細美遙子訳)
しかも?彼?はかなり耳が遠くなっていて、とくに女性や子どもの高い
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