全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
 
かたは、本能的なものだ。主寝室は、古い痛みの引き金だらけなのだ。
(ウィリアム・ギブスン『モナリザ・オーヴァドライブ』3、黒丸 尚訳)

 彼は部屋を出て、階段を下り、丘に生えた一本の木のところまで歩いていった。完璧な日だった。昼間というものの歴史が目の前にまるごと広がっている気がした。燃えるような草は、これまで見てきたすべての草を代表していた。
(フリオ・オルテガ『ラス・パパス』柴田元幸訳)

電話がさんざんさんざん鳴った末に誰かが出る。向こう側から、聞き覚えのある沈黙。
(ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』柴田元幸訳)

電話口のクラークからは、裏手のベランダまで
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