全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
 
いつから家は家だったのだろう?
(チャイナ・ミエヴィル『クラーケン』下巻・第五部・59、日暮雅通訳)

ドアってやつはいつドアでなくなる?
(ジョン・スラデック『時空とびゲーム』越智道雄訳)

ドアを見たら、開けるがよい。
(ロバート・シルヴァーバーグ『ガラスの塔』9、岡部宏之訳)

 彼は衣装戸棚の扉をぐいと引き開けた。何も掛かっていないハンガーがカラカラと音をたて、扉に掛かっていた彼自身のオーバーコートがふわりと飛び出して両袖が揺れた。だが、彼女の衣類はそこには一枚もなかった。
 ただの一枚もなかった。
(ジョン・クロウリー『リトル、ビッグ』?・[4]・?、鈴木克昌訳)
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