真紅の門からひろがる空漠をぬけていく南風/菊西 夕座
恥じらいの慎みをまるめこんだいたずらな目つきで微笑み
若々しい女ざかりの正門から春がきたことをつげる
タガをはずして高め合う欲情とひきもどされる着衣
ふくれた空漠で秘所をふさぎ合う交感さえゆるしはじける
少女は仮構の成熟から羽化する飛翔の快楽を手にいれ
交換でわたしに現(うつつ)の首(さき)から羽化する夢をあたえてくれる
夜明けまえに彼女は石だらけの政庁跡から下って夏の門をでていく
廃墟に腰かけたままわたしは木立の葉ずれに耳目を埋葬(うめ)ていく
丘の下では生きそこねの泥をすって蓮が花をひらきはじめる
失われた生の不在史を水面にうつして太陽は花のかたちを完成させる
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