浮き袋/洗貝新
 
のか
急にイルカがスピードを上げて泳ぎだした
  イワシの大群が波に撥ねている
あれ〜
浮き袋が横に傾いた
何もない碧い海
アタマから少し沈み込んだわたしは
すぐに体制を立て直そうと藻掻いてる
脚先をバタバタと音を立てて、あ!
アラ?何かがわたしの踝に引っかかるのよ
何かがわたしを深い海の底に
引きずり込もうとしているの
〜きゃあ〜なに〜
碧い底の方から光る
金色に輝く大きな目が睨んでる
プシュケ〜炭酸の泡が舞う
、な、なに、大王様?

お姉ちゃん、姉ちゃん
ちょっと、
脚を向こうにやってよ。もう〜
ボクは星の王子さまの続きを夢見ていた
地中海を超えたその途中、
、なんだよ〜もう〜
ボクは背中を起こすと
こっちに向けていた脚を
向こう側に蹴ってやった
枕を抱いてモグモグ
姉は寝返りをうって
脚をひとつ大きく蹴り返してきた
浮き足だつなノン
なあんだ?
腹にうずくまるニャンも
不機嫌な顔して姉を振りかえる
また続きを見よう
反対を向いて眠れ
地平線遙かな旅
そろとろ夕飯の時刻だろうね。







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