霧子の朝に 夜の変貌/洗貝新
暗い畦道の中央に
私よりも高い背丈でそびえ立ち
弱い灯りをあてると
白装束に身を包んだ女性の姿が浮かびあがる
それはじっと凝視もできないくらい
私に圧力をかけてきた
草むらから二つの眼が光る
月灯りに照らされて
野鳥の鳴き声がいつまでも追いかけてくる
小さな獣たちが手探りに辺りを徘徊する
彼らは月の引力を気にすることもなく
太陽の恵みを気にすることもない
雨あがりには
水気を帯びた草息の気配に虫たちが踊り出て
靄の中、先を急ぐ私がいる
霧子は何処に消えたのだろうか
巡る宛てのない旅は終わりも近い
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