図書館の掟。/田中宏輔
る。
それを二十人ばかりの生者たちが見守っている。
生者たちは自分の賭けているほうの死者の名前を
口々に叫んで応援している。
一人の死者が相手の死者に肘を切りつけられて
片腕を落とした。
切断された肘から
白濁した銀色の体液が滴り落ちる。
片腕の死者がよろけたところで
相手の死者が両手の鎌を交差させて
死者の首を挟んで鋏のようにして切断した。
首が落ちて
首のない身体がくず折れる。
一瞬
静寂が訪れる。
その沈黙のベールを破って
扉が開けられた。
「動かないで!
あなたたちを逮捕します。」
最初に部屋になだれ込んだ刑事が
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