図書館の掟。/田中宏輔
 

図書館長は大きくため息をついて
よりいっそう目を細めて笑った。
そのタペストリーは随所にきらめきを発することだろう。
もちろん
ところどころにある沈み込みは仕方がないであろう。
意味もなさず
映像喚起力もないところは随所にあるであろう。
しかし
ディラン・トマスのすぐれた詩のように
きっとすごいフレーズが顔を覗かせてくれるだろう。
図書館長は机の引き出しから二冊のファイルを取り出した。
上のものには
これまでに図書館に収められた
すぐれた詩人や作家たちの写真がファイルされていた。
下のものには
図書館長が選んでいた
さまざまな
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