図書館の掟。/田中宏輔
 
事が言った。
だれも動かなかった。
「全員
 死は免れないでしょう。
 もちろん
 あなたたちには
 死者になる権利は剥奪されるでしょう。
 死と同時に火葬に付されるでしょう。」
数多くの警察官の手によって
死者たちのゲームを主催していた者や観客たちが
つぎつぎと手錠につながれていった。


     *


「それではつぎに弁護側の死者に証言させてください。」

法廷には
弁護側の死者と
検察側の死者が出廷していた。

死者は虚偽を口にすることはないので
裁判で証言者として認められることになっているのである。

証言台のところで
女性の死者に
生者の弁護士助手が近づいて
耳元にささやいた。

女性の死者の口から
ぽつぽつと言葉がもれていく。
マイクがその声をすべて拾っていった。

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