図書館の掟。/田中宏輔
だ。
ああ、ロートレアモンが、ディキンスンが
図書館の死者であったらよかったのに。」
図書館長は興奮して一気にしゃべった。
男はカタログを閉じた。
図書館長は目をすえて、男の目を見た。。
「さて、どうなさいますか?」
男は、いかにも小ずるそうな表情をして図書館長の顔を見た。
図書館長は机の引き出しから小切手帳を取り出した。
*
男は図書館長から小切手を受け取った。
死者たちの共同制作作品だって?
たとえすぐれた詩人であろうと
ただ死者たちが持つ記憶を
あの愚かな図書館長がコラージュするだけではないか?
それが過去の
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