図書館の掟。/田中宏輔
 
思ったことを述べただけじゃないですか?」
「おっしゃるとおりです。」
「彼が信じたがっていたことと嘘とはどう違うの?」
「あなたは死者に感情がないとお思いですか?」
刑事の横にいた女が口を開いた
「この女は何者なの?」
「死者の一人です。」
容疑者の女は目を瞠った。
「自分のほうから口を開いてしゃべる死者なんているの?」
「きわめてめずらしいことでしょうね。」
刑事は容疑者の女の目をじっと見つめた。
「死者に感情なんてあるはずがないわ。」
「あるのですよ。」
「それと死者が嘘をつくかつかないかといったこととどういう関係があるの?」
「死者にもプライドがあり故意に嘘をつく
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