言葉の魔術と感動『松本隆の赤いスイトピーにみる』/洗貝新
 
は大きいのだ。
春をイメージさせたのだろう。
花の名前をスイトピーと持ってきたのは単にメロディ、音韻との合わせがよかったからだ
と、松本隆は後に述べている。
しかし、仮にこれが白いスイトピーだったなら、
この曲はこれほどまでに流行歌として受け入れられただろうか。
  〜心の岸辺に咲いた白いスイトピー

このことに作者をはじめ誰も気付かなかった、というのも珍しい。
まさに怪我の功名ではないか。
  〜赤いスイトピー。
なんの抵抗もなく耳に馴染んだ言葉として周囲も受け入れる。
存在しない現実感覚。
これこそまさに言葉による偶然の魔術ではないだろうか。



     
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