MEMBRANE「”境界溶解”―― 変容の螺旋」として12片/あらい
 

序幕:あまだれの記号

 記号化された肉体 増殖するシミュラークル
 人工食材の群体/培養された死角/ホログラムの蝕たち

 苦虫を噛み潰したようなくそまずい飴を、舌の上で転がすように、行き場のない飲み込めないものが滞留している。しづくの奥に眠る、かつて名を持たなかったものたち。あまだれが内耳を払うたび、(口をつける紙コップの泥水、風でゆらぐ風鈴のおと、水辺の子供らに眩しくて目を細める。)世界はまだこちら側へ屈折してこない。

輪郭を失う雨粒はサイノメで、毎朝 つっついて
 /くわえ/てをふって/さていった(香りがする
「こちらの世界はどうですか〈ひらかれたことのな
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