世界の渚/カワグチタケシ
 
赤に衝かれ
たまらず走り出す


4.世界の渚に立つ

真正面から顔に風を受け
世界の渚に立つ
こめかみを刺す氷の温度や
果てしなく散文的な世界と対峙するには
君の繊細な修辞法は何の役にも立たない


5.雨上がりの夜空に

雨が上がった夜 公園脇の緩衝地帯に
自転車で集まってくる少年少女
彼らは企んでいる
作戦行動なのだ
俺は疲れた足を引き摺って
そのかたわらを通り過ぎる
作戦行動なのだ
コードネーム コードネーム
俺はそのかたわらを通り過ぎる


6.ノキア

返事が遅くてごめんね
だって実際俺は遅れてんのさ
屋根や塔のてっぺんを
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