夏帰り/トビラ
うか、ピシッとした感じの人だと思っていた。なので、そのだらけた姿は意外だった。などと思いながら、林さんの方に目を向けると、夏のこの世の果てまで届きそうな水色の空と、椅子に背もたれて「あぁ」とうめく林さんの姿が何か妙にしっくりきた。
「ああ、ごめん。ウザかったよね?」
ふいに林さんは、こっちを見て言う。
「ああ、いや、全然全然。ただちょっと意外だなって思って」
「意外?」
「ああ、うん。林さんはなんと言うか、しっかりした姿が印象にあったから」
「ごめん、ごめん、みっともないよね。隣のよしみということで許して」
林さんはこっちの方に向き直して笑う。
「あれ? 浅沼くんは
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