夏帰り/トビラ
部活のない放課後は暇で、池谷はとっくに帰ったし、水原は兼任している生徒会に行った。仁藤は何をしているかわからない。まだ校舎にいるか、もう下校したか。もちろん仁藤には仁藤の領分があるから、仁藤がどうしようと、それは仁藤の自由だ。これはただ単に、このまま家に帰ってもなあという、個人的な問題だ。それは池谷の問題でもなく、水原の問題でもなく、もちろん仁藤の問題でもない。僕の問題だ。まあ、帰ってエペでもするか?
「ああぁあ」
隣から間の抜けた声が聞こえてくる。
「だるぅ」
つまらなそうにポツリとつぶやいたのは、隣の席の林さんだ。でも、僕はちょっとおどろいた。林さんはわりと真面目というか
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