COME TOGETHER。/田中宏輔
溢れ出ていこうとするものについて思いを馳せる。自らの手で自分という器を落として壊す者がいる。
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器は簡単に壊れるだろう。壊すのは難しくないだろう。しかし、もはや同じ器をつくる材料は、どこにもないのだ。同じ器は、一つとしてないのだ。悪夢を見た。つぎつぎと器が落とされていった。世界がつぎつぎと壊れていくのであった。モノクロの夢。なぜか色はなかった。
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そして、音と声が聞こえるのであった。いくつもの器がつぎつぎと壊れる音と重なって、数多くの人間の絶叫が聞こえてくるのであった。どの器一つとっても、貴重なものなのだ。だれかが自分を落としそうになったら、ほか
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