詩の水族館/ハァモニィベル
 
      ―― 死んだ魚が光ることを、はじめて觀察したのは
                アリストテレスであった。〈左京〉

       
頬(ほ)につたふ 涙 拭わず
白砂(しらすな)に われ泣きぬれて蟹と戯(たは)むる 〈啄木〉



人はふしぎなもので、自分の景色の中に住んでいる
月光の海には盲魚が居る。
盲目は光を感知しない、―感知しても氣づかない―。
眞實は燐だ。
形ある物証以外のものを否定する 〈朔太郎〉



蒼黒い水のおもてに、春の光がきらきらと浮いてゐる。
水底の藻の塊を押し分けて、大きな鯉がのつそりと出て来た
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