おひとり様/リリー
 

 築年数四十年を過ぎた中古マンションで
 今夏暫くの間、我が家でも玄関ドアの脇に
 宅配弁当業社の貸出しボックスが
 配置されるようになった

 すると挨拶を交わすご近所さんから
 「元気にしてるの?」
 「体の具合どう、だいじょうぶ?」
 さりげないお心遣いのお言葉をいただいて
 ご年配の人からすれば、
 家庭も持たないでいる中年の女性に対して
 当然の解釈なのでしょう

 けれども、この物価高で食材にロスを出さず
 一人前の食卓を遣り繰りする事は難しい
 全体的なコストで考えると宅配弁当の方が
 出費をおさえられる
 同じ惣菜ばかりを食べなくてもいいし
 偏食が無ければメニューの楽しみもあって
 暮らしやすさは、人目を気にして
 成り立つものでもないだろう

 職場から帰宅すると
 何となく想像してしまう
 私のための一食分を届けてくれている
 顔すら見たこともない宅配スタッフさんの姿
 これもありがたい蜘蛛の糸みたいな
 繋がりに思えるのです。
 
 
 
 
 

 
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