どうせ迷うなら命を賭けて/ホロウ・シカエルボク
 
なり過ぎないように注意した、そんなことをしているうちに夜が来た、あたりはいわゆる漆黒の闇で、すぐそこによからぬものが潜んでいるかもしれなかった、でもわたしはなにも怖くなかった、虫だってお化けだって受け入れてあげる、生まれてこのかた経験したことが無いくらい気分が高揚していた、わたしは生きるためにここに来た、睡魔が来るまで歩き回って、寝心地の良さそうな窪みを見つけてすっぽりと収まるような格好で眠った、今まであまり寝つきが悪い方じゃなかったけれど、朝までぐっすりと眠った、目が覚めるとボロボロの野良犬がわたしを見下ろしていた、おはよう、と声をかけるとふいと何処かへ行ってしまった、鬱蒼とした木々の間を抜けて、それでも太陽は懸命にこの森にも朝を告げていた、わたしは立ち上がり、大きく伸びをした、今日はどこかで顔を洗えるかどうか探すところから始めよう。


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