詩の植物園/ハァモニィベル
道路はここに集まり
うやうやしく人はゆき あたまを垂れて人はかへる
へとへとに壯麗に生きてゐる蜘蛛の巣の大都市
惡食(あくじき)する怪物の胃ぶくろの中 〈暮鳥〉
自分は見た。
朝の美くしい巣鴨通りの雜沓の中で
自分は見た
夜の更けた電車の中に
人は皆んな美くしく人形のやうに
他界の力で支配されて居るのだ。〈元麿〉
満員電車で 爪先立ちの靴が
ぼやいて言った
踏んづけられまいとすれば だ
踏んづけないでは いられないのだが
と。〈貘〉
水が涸れて乾ききった石の間に 何か赤いものが見える
花ではない もっと激烈なものだが
す
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