詩の植物園/ハァモニィベル
 
      ――― やまと歌は、人の心を種(たね)として
        よろずの言の葉とぞなれりける〈紀貫之〉

      ――― 夏草や つわものどもが夢の跡 〈松尾芭蕉〉



こゝろ無き歌のしらべは 一房の葡萄(ぶどう)のごとし
なさけある手に摘まれて あたゝかき酒ともなるらむ
おほかたは噛みて捨つべき うたゝ寢の夢のそらごと
されば落葉と身をなして 風に吹かれて飜(ひるが)えり
ひとりさみしき吾(わが)耳は 吹く北風を琴と聴く 〈藤村〉



こころはあぢさゐの花
ももいろに咲く日はあれど
うすむらさきの思ひ出ばかり
ももいろ
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