空のオルゴール/杉原詠二(黒髪)
 
めき立つ
しかし風には悲しい予感が含まれていた

空のオルゴールが高らかに鳴る
すべての戦争は殺し合い
ついに光の咆哮が空を裂き
きのこ雲を吐き出す
破壊と悲鳴と汚辱が現われた
一瞬のうちに
街は影だけを残した
風が黒ずみ
街全体が地獄の跡となった
末期の水を求め
うろつき回る犠牲者
それらの痛みを記憶している人がいて
様々な記録が残っている
人は大切なことは忘れないものだ
たとえ負の記憶であったとしても
それを正に変えていく
力を人は持っている

やさしくすべてを鎮めていく
人々の祈りの力よ
神仏の全精力よ
聖なる力ここに在り
誰かが置き忘れた魂
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