過越祭/森 真察人
 
坂の上の校門で磔(はりつけ)にされた少女の歳は十五であり、少女の脇腹の絶えず膿(うみ)を吐く傷こそが彼であって、幾度掻(か)こうとも少女の痒(かゆ)みは失せることがなかった。少女が掻きむしるほどに傷は膿み、少女にはそれを解き消す術がなく病める燔祭(はんさい)を払いのけるように、雹(ひょう)を降らせて地表のひとびとを抉(えぐ)らせ余った肉塊を蛙に食らわせたのだった。彼の全体はやはり傷そのものであって、彼には膿を嘔吐することの甲高さを掻き消す術がなく門扉に十字様に返り血を塗りたくった。やがて掌(てのひら)に打ち込まれた釘に両の手の甲の肌をねばつかせながら
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